宝塚ベガ音楽コンクールNews

河島利香(ピアノ部門第1位)

2017年6月24日(土)に「第29回宝塚ベガ音楽コンクール本選(ピアノ部門)」を宝塚ベガ・ホール(宝塚市清荒神1丁目)で開催し、入賞者が決定いたしました。
同コンクールは、有能な演奏家を発掘・育成し、音楽文化の発展、向上に寄与することを目的とし、地元演奏家の協力のもと平成元年(1989年)から実施しています。
1位に河島利香さんが選ばれ、賞状と賞金50万円が贈られ、併せて兵庫県知事賞も受賞されました。河島さんには、平成30年(2018年)1月に宝塚ベガ・ホールで開催予定の入賞記念演奏会「ベガ・ウィナーズコンサート」(主催:宝塚市文化財団)に出演していただきます。
このほか、一般公募の審査員18名によって、最も印象に残った演奏者に贈られる「会場審査員特別賞」には福田優花さんと坂口航大さんが選ばれました。


第29回宝塚ベガ音楽コンクール 審査結果(ピアノ部門)


順位氏名年齢現住所
1位河島 利香 (かわしま りか)21大阪市大東市
2位葛原 寛 (かつらはら ひろし)19東京都足立区
3位福田 優花 (ふくだ ゆうか)21東京都北区
3位小森 野枝 (こもり のえ)24東京都調布市
5位横山 瑠佳 (よこやま るか)21東京都台東区
6位松田 彩香 (まつだ あやか)18神奈川県横浜市
入選櫻井 悠乃 (さくらい ゆうの)17東京都府中市
入選小林 遼 (こばやし りょう)24埼玉県飯能市
入選福原 満希 (ふくはら みつき)19奈良県桜井市
入選浦井 聴夫 (うらい としお)26富山県富山市
入選池田 菫 (いけだ すみれ)23京都府京都市
入選森崎 愛弓 (もりさき あゆみ)19東京都北区
入選横江 智至 (よこえ さとし)23東京都豊島区
入選栁澤 光彦 (やなぎさわ みつひこ)30千葉県松戸市
入選坂口 航大 (さかぐち こうた)23大阪府枚方市
兵庫県知事賞河島 利香
会場審査員特別賞福田 優花・坂口 航大

※3位ならびに入選は出演順。
※年齢は2017年6月24日現在。

■講評: 植田 克己 審査員長

 まずは、このコンクールに何度も招聘していただいていることにお礼を申し上げたいと思います。そしてまたこのコンクールは宝塚市、宝塚市文化財団、市民のみなさんによって支えられているコンクールであり、敬意をもって接してきました。本日、本選を迎え、その思いは益々強くなりました。まず今日この時を無事に迎えたことを喜びたいと思います。
 一昨年も審査をさせていただきましたが、その時より参加者が増えていると聞き、嬉しく思っております。また、目標に向かって挑戦したい、音楽の道をこれを機会に極めてみたいという方が増えたことを喜んでいます。参加される方が増え、レベルも上がったように思います。予選では本選に進まれた15名以外にも、もう一度聴きたいと思った方が数人はいました。本日の15名の熱演に圧倒されてエネルギーをいただいただけでなく、名曲の良さや味わいを私達に届けていただいたことに感謝しています。
 自由曲については皆さん得意な曲を演奏されていると思いますので、ベートーヴェンの課題曲についてお話します。ベートーヴェンは他の作曲者には無い強い意思を記譜に託しています。モーツァルトやバッハ、シューベルト、あるいはショパンやリストとも違うベートーヴェンならではの記譜を持ちます。アレグロなのかアレグロ コン ブリオなのか、あるいはアダージョなのかアンダンテなのか、その表現の差を考えていただきたい。4分の2拍子なのか。基本となるリズムが8分音符なのか、4分音符なのか。ベートーヴェンはこと細かに記譜をして、我々に示しています。その読み方によっては、違う表現があるかもしれない、テンポについてももう少し違う考え方があるかもしれない、ということを考えて幅広く勉強してほしいという風に思いました。決められたコースにのって、ひとつのことを繰り返し勉強するだけではなく、その都度違うヴァリエーションを自分の中に持てると、もっと違った表現、もしくは音が聴こえてくるのではないでしょうか。典型的な例として、クレッシェンドし、フォルテが強く続くときにスビト ピアノ、「急に弱く」という表示が出てきます。みなさんはそこを意識され、苦労されたと思いますが、そのスビト ピアノが使われる場所によって、あるいはハーモニーによって違いがあるかもしれません。そういう可能性をもっと伝えてほしいと思いました。
 もうひとつ気になったことは、ソナタ形式で提示部と同じ表現を再現部に求めている方がいらっしゃいました。音符や流れは一緒であることも多いですが、使われている調性が違っているため、表現や響きの違い、音域の違いができます。ベートーヴェンは曲によって、様々な変化を加えたりしていますので、そこをもっと伝えてほしいと思います。ご自身の感性も大切にしてほしいですが、作曲家が残した記録、記譜と深いところで結びつき、ますます研鑚を積まれますよう、心から願っております。
 入賞、入選された皆さま、そして残念ながら本選に進まれなかった皆さまのすべての方々に、同様に申し上げたいと思います。ご清聴ありがとうございました。