宝塚国際室内合唱コンクールNews

昨年に引き続き、2022年度(第37回)は、ジャンル不問、曲目不問、部門分けも無しの特別編で実施。各合唱団の特色が光る、バラエティ豊かなステージになりました。また、今回初めてオンライン部門を開催。最優秀賞・優秀賞・優良賞に加え、一般のみなさまの投票により聴衆賞が決定しました。

◆第1位
Ensemble Carpe Diem(兵庫県)

◆第2位
VOCI BRILLANTI(愛知県)

◆第3位
Voces Ksa:na(大阪府)

◆兵庫県知事賞(国内団体の最高位)
Ensemble Carpe Diem(兵庫県)

◆宝塚市教育長賞
(出場合唱団員の平均年齢が19歳以下の団体のうちの最優秀団体) 
京都女子高等学校コーラス部(京都府)

◆宝塚市長賞
(出場合唱団員の平均年齢が60歳以上の団体のうちの最優秀団体)
該当なし

◆オンライン部門
<最優秀賞> 
埼玉栄高等学校コーラス部(埼玉県)
<優秀賞>  
Vocal Ensemble 歌家(兵庫県)
St. Joseph's College Chamber Boys' Choir(香港)
PENS Students Choir(インドネシア)
<優良賞>  
女声合唱団 コール・ブリランテ(大阪府)
<聴衆賞>  
埼玉栄高等学校コーラス部(埼玉県)


Ensemble Carpe Diem


審査講評


審査員長:野本 立人(合唱指揮者・兵庫教育大学大学院教授)


 みなさんお疲れ様でした。そして、おめでとうございます。まだ結果を発表していないのに、「おめでとう」とは不思議ですが、コンクールを開催できたことに、まずはおめでとうと申し上げたいと思います。
 このコンクールは、一昨年はコロナ禍のために開催できず、昨年は規模を縮小して開催しました。今年は昨年より参加団体が増えたものの、参加団体数の関係で、ノンカテゴリーで開催することになりました。参加団体がもう少し少なかったら開催すらできないところでした。みなさまご参加いただき、ありがとうございました。
 そういう中でのコンクールでしたので、本日みなさまの歌を聴いてみないと、蓋を開けてみないと分からない、という気持ちで聴かせていただきました。しかし、とても素晴らしい演奏が続いて、ほっとすると同時に、何度も感動いたしました。こんな演奏ができるんだな、こんな状況の中でも音楽を奏でられるんだなという幸せが何度もありました。本当にありがとうございました。
 全体の講評として一つだけ、私はこのベガ・ホールとのお付き合いは20年くらいになりますが、大変素晴らしいホールです。本当に価値のあるホールです。みなさんの周りの壁はレンガで出来ており、一つ一つ手作業で割ったものをはめ込んであります。これの良さは、ベターッとした壁であれば、反射が一辺倒になってしまいますが、手作業で割ったレンガがはまっているおかげで、このホールでたくさんの乱反射が起きています。なので、ナチュラルな音がします。皆さんがステージに立っていて、私が一番後ろの席で聴いていても、最弱音のピアノの音でもとても大きな音のフォルテでも、どれも素直にナチュラルに聴こえます。これがこのホールのすごくいいところです。このホールの響きはなかなか他にはないと思います。そうするとこのホールの鳴り方、響き方をちゃんと使い切れた、利用し切れたという演奏はやはりしっくりくると感じました。一方で、どこに行っても同じように歌うという団体もあるかと思いますが、鳴りすぎている、音の飽和状態が起きていることを感じる演奏もありました。そういう意味では、このホールの良さをどうやって活かしきれたかということが重要になりました。
 さて、今日はマレーシアから岸本先生がいらしてくださっていますので、一言いただきたいと思います。


審査員:岸本 正史(合唱指揮者・マレーシア国立マラ工科大学音楽学部教授)

 私はマレーシアに住んで9年目になります。その前にはタイで2年間合唱を教えていました。海外に住んで、同じ合唱をしていますと、日本が裕福であること、みんなが恵まれていることを実感します。学校に行けば、教室があって、音楽室にピアノがあって、クーラーがあり、電気があって、窓が閉まって雑音が入ってこない。マレーシアにはコンサートホールがありません。ベガ・ホールのようなコンサートホールがもっとあったら、音楽の文化が栄えると思います。日本は違う街に行けばまた別の素敵なコンサートホールがあり、次はどこでコンサートをしよう、どこで練習しようということがすぐできる環境にありますが、日本を離れますとそんなことは全くありません。みなさん最高の環境の中で合唱ができていることに感謝して一日一日を過ごしてほしいと思います。
 日本には他にも全国規模のコンクールがありますが、この宝塚国際室内合唱コンクールが、それらと違うところはやはり選曲の重要性だと思います。私たちが審査をするうえで、「この団体を来週フランスの国際大会に推薦したときに賞をとれるだろうか」、「この選曲で、来年イタリアで賞がとれるだろうか」など、国際的なレベルでちゃんと評価されるかどうかを考えると、やはり選曲にかかってくると思いました。それらをよく考え、国際コンクールに参加するという意義を踏まえて取り組んだ団体、そして技術的な面でバランスのとれた団体が今回は大きく評価されたと思います。
 国際コンクールはたくさんあります。色々なレパートリーに踏み入れることも楽しみのひとつだと思いますので、ぜひチャレンジし、海外に飛び出していただけたらと思います。


宝塚国際室内合唱コンクール委員会理事長 スピーチ


本山 秀毅(宝塚国際室内合唱コンクール委員会 理事長)

 本日、1位を受賞されたEnsemble Carpe Diemが最後に「Libera me」を演奏されました。「Libera me」はレクイエムの最後の曲で、「私を解放してください」、「救ってください」という意味です。様々な社会の状況において、我々は合唱の持っている歌詞に、非常に敏感になっています。そして、その歌詞の意味を深く考え、音楽とともに発信する時代になってきました。最後の「Libera me」という曲は、ウクライナで困難に直面している人のことを考えると、色々な想像も膨らみますし、それを作曲家が音にしたということを踏まえると、我々演奏する者としての責任も感じます。
 今日のコンクールは、演奏して賞が決まったことにも意味があると思うのですが、この時代にコンクールとして開催できたことに、非常に大きな意味があると思います。
 昨年も同じことを申し上げましたが、いまだ困難な社会状況が続く中で、このような形でみなさまとともにこのコンクールを開催できたこと、またここに至るまでには、宝塚市文化財団のみなさま、そして本コンクール委員会のみなさま、そのほか大勢の方のサポートでこのコンクールが成立していることに、改めて感謝の意を伝えたいと思います。
 昨年、この場で我々がコロナ禍の中でともに進んでいこうという意味を込めて発信した「宝塚宣言」を、本日もう一度ここで読み上げさせていただいて、これからの我々の進む道を改めて共有していきたいと思います。

宝塚宣言

われわれ「共に声を合わせて歌うこと」を愛する者たちが、今日、この場に集い、育んできた音楽を披露し、お互いがその価値を認め合う時間を持つことが出来たことを心から誇りに思い、また共に喜びたいと思います。

時代は、われわれが想定し得なかった状況に向かい始め、そのことによって音楽は、かつてない厳しい環境に置かれています。しかしこの状況下であっても「音楽」、そして「声を合わせて歌うこと」、またそれらに関わることの価値は、些かも損なわれることなく微動だにするものではありません。

一日も早く、以前のような豊かな歌声が皆さんの周囲を満たし、そしてこのコンクールが遠く海外の合唱人をも加えて発展することを心から願います。

今日われわれがこの場で新たにした思い、大切だと感じた事柄を今一度胸に留め、継承するために力を尽くし、今後、われわれがこのコンクールの場、そしてそれぞれが関わる合唱活動の場を通して、さらに音楽の高みを目指そうではありませんか。


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