第33回宝塚ベガ音楽コンクール・木管部門 本選結果
第33回宝塚ベガ音楽コンクール 結果発表
2024年9月14日(土)に「第33回宝塚ベガ音楽コンクール本選(木管部門)」を宝塚ベガ・ホール(宝塚市清荒神1丁目)で開催し、入賞者が決定いたしました。
本選には予選審査を通過した14名が出場。審査の結果、1位に友田航太郎さん(20歳、北海道札幌市)が選ばれ、賞状と賞金50万円が贈られ、併せて兵庫県知事賞も受賞されました。友田さんには、令和7年(2025年・時期未定)に宝塚ベガ・ホールで開催予定の入賞記念演奏会「ベガ・ウィナーズコンサート」(主催:宝塚市文化財団)に出演していただきます。
また、一般公募による聴衆審査員の審査も実施され、聴衆審査員特別賞には織田咲良さん(22歳、兵庫県加古川市)と井上慎介さん(21歳、福岡県糟屋郡粕屋町)が選ばれました。
受賞された皆様の今後のますますのご活躍を祈念いたします。
第33回宝塚ベガ音楽コンクール 審査結果(木管部門)
順位 | 氏名 | 楽器 | 年齢 | 出身地 |
1位 | 友田 航太郎(ともだ こうたろう) | ファゴット | 20 | 北海道札幌市 |
2位 | 石田 みそら(いしだ みそら) | フルート | 23 | 愛媛県四国中央市 |
3位 | 井上 慎介(いのうえ しんすけ) | オーボエ | 21 | 福岡県糟屋郡粕屋町 |
4位 | 藤枝 麻里花(ふじえだ まりか) | フルート | 21 | 茨城県水戸市 |
5位 | 織田 咲良(おだ さくら) | フルート | 22 | 兵庫県加古川市 |
6位 | 木津 結子(きづ ゆいこ) | クラリネット | 21 | 福井県越前市 |
入選 | 森松 炎山(もりまつ えんざん) | オーボエ | 22 | 東京都三鷹市 |
入選 | 赤土 仁菜(しゃくど にな) | ファゴット | 27 | 奈良県香芝市 |
入選 | 鈴置 紘一朗(すずおき こういちろう) | クラリネット | 29 | 愛知県大府市 |
入選 | 阿部 寛己(あべ ひろき) | クラリネット | 28 | 宮城県仙台市 |
入選 | 別府 みつき(べっぷ みつき) | クラリネット | 27 | 兵庫県神戸市 |
入選 | 小島 奈々(こじま なな) | クラリネット | 26 | 京都府京都市 |
入選 | 大西 巧真(おおにし たくま) | ファゴット | 22 | 岡山県岡山市 |
入選 | 下山 明莉(しもやま あかり) | オーボエ | 24 | 茨城県龍ケ崎市 |
兵庫県知事賞 | 友田 航太郎 | |||
聴衆審査員特別賞 | 織田 咲良 | |||
井上 慎介 |
※入選は出演順。
※年齢は2024年4月11日(応募締切)時点。
■講評:大嶋 義実 審査員長
ご紹介にあずかりました大嶋義実です。本日は講評ということでお話をさせていただきますが、通常のように「演奏のダイナミクスがどうであったか」「アーティキュレーションがどうであったか」といった話はしません。そういったことは皆さんもレッスンで十分に聞いてきたでしょうし、今日は別の視点でお話しさせていただきたいと思います。
審査員が皆さんの演奏を聴く際に何を考えているのかについて、私自身の視点から少しお話ししたいと思います。他の審査員の先生方がどうお考えなのかはわかりませんが、私が感じていることをお伝えします。おそらく、他の審査員の方々も、無意識のうちに似たようなことを考えているのではないかと思います。
さて、まずこの宝塚ベガ音楽コンクールの木管部門ですが、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットといった異なる楽器の演奏を同じ審査員が評価することになります。「フルートの先生がオーボエの演奏を評価できるのか」と思われる方もいるかもしれませんが、ここに一つ重要な視点があります。それは、「皆さんが演奏する音楽が、自分の声で語られているかどうか」という点です。少なくとも私はこのように聴いています。
「自分の声で語る」というと、「個性的な演奏」という意味だと思われるかもしれませんが、そうではありません。演奏する作品、たとえばモーツァルトやバッハといった楽譜には、既に完成された音楽の形が存在しています。楽譜そのものに個性が入るわけではありません。しかし、それでも「自分の声で音楽を語る」とはどういうことか。
音符そのものは音ではありませんが、その音符の向こう側には広大な音の世界が広がっています。楽譜というものは、音楽の世界への扉を開ける鍵のようなものです。その扉を開けて、我々演奏家はその音楽の世界に踏み入ります。そこに広がる景色を、自分の目で見て、自分の声で聴く人に伝える。それが演奏家の使命だと思っています。
ここで、少し面白い話をしましょう。目の見えない人が美術館に行くという話です。目の見えない人は、絵を見ることができませんが、付き添いの人が絵を言葉で説明します。「大きさは50センチ×80センチで、女性が犬を抱いている絵です」などと説明するのですが、それだけでは伝わらない。さらに、「女性は穏やかに犬を撫で、外の景色も緑に包まれていて、落ち着いた雰囲気です」と詳しく説明することが大切です。
しかし、別の人が「実は、壁が壊れていて、その先に不安げな景色が広がっている」と異なる解釈を伝えると、全く別の印象が生まれます。このように、自分の目で見て感じたことを自分の言葉で伝えることが大切で、これこそが演奏家の役割でもあります。
つまり、モーツァルトのような有名な作品でも、定型的な説明に終始せず、楽譜の向こうに広がる世界を自分の目で見て、自分の声で語ることが大切です。そうすれば、聴く人々にとって音楽の世界がますます豊かで楽しいものになるでしょう。
受賞者の皆さん、おめでとうございます。また、受賞はしなくても、今日この舞台に立った皆さん全員にとっても素晴らしい成果です。これからも音楽の世界をどんどん広げていってくださることを願って、私の講評の代わりとさせていただきます。ありがとうございました。