第33回宝塚ベガ音楽コンクール・声楽部門 本選結果
第33回宝塚ベガ音楽コンクール 結果発表
2024年9月8日(日)に「第33回宝塚ベガ音楽コンクール本選(声楽部門)」を宝塚ベガ・ホール(宝塚市清荒神1丁目)で開催し、入賞者が決定いたしました。
本選には予選審査を通過した14名(1名棄権)が出場。審査の結果、1位に山田知加さん(31歳、愛知県豊明市)が選ばれ、賞状と賞金50万円が贈られ、併せて兵庫県知事賞も受賞されました。山田さんには、令和7年(2025年・時期未定)に宝塚ベガ・ホールで開催予定の入賞記念演奏会「ベガ・ウィナーズコンサート」(主催:宝塚市文化財団)に出演していただきます。
また、一般公募による聴衆審査員の審査も実施され、聴衆審査員特別賞には同じく山田知加さんが選ばれました。
受賞された皆様の今後のますますのご活躍を祈念いたします。
第33回宝塚ベガ音楽コンクール 審査結果(声楽部門)
順位 | 氏名 | 声種 | 年齢 | 出身地 |
1位 | 山田 知加(やまだ ちか) | ソプラノ | 31 | 愛知県豊明市 |
2位 | 熊木 夕茉(くまき ゆま) | ソプラノ | 25 | 奈良県奈良市 |
3位 | 下林 一也(しもばやし かずや) | バリトン | 35 | 滋賀県大津市 |
4位 | 浅野 千尋(あさの ちひろ) | メゾソプラノ | 28 | 東京都小平市 |
5位 | 喜納 響(きな ひびき) | テノール | 35 | 沖縄県糸満市 |
6位 | 池田 真己(いけだ まさき) | バリトン | 33 | 大阪府三島郡島本町 |
入選 | 中山 美紀(なかやま みき) | ソプラノ | 33 | 神奈川県横浜市 |
入選 | 石川 真子(いしかわ まこ) | ソプラノ | 24 | 徳島県板野郡北島町 |
入選 | 北田 実佳(きただ みか) | ソプラノ | 22 | 滋賀県近江八幡市 |
入選 | 芹口 りの(せりぐち りの) | メゾソプラノ | 24 | 愛知県名古屋市 |
入選 | 吉川 秋穂(よしかわ あきほ) | メゾソプラノ | 34 | 島根県松江市 |
入選 | 中島 康博(なかしま やすひろ) | テノール | 33 | 大阪府寝屋川市 |
入選 | 影山 りさ(かげやま りさ) | ソプラノ | 32 | 兵庫県芦屋市 |
入選 | 森 翔梧(もり しょうご) | バリトン | 30 | 高知県四万十市 |
1名棄権 | ||||
兵庫県知事賞 | 山田 知加 | |||
聴衆審査員特別賞 | 山田 知加 |
※入選は出演順。
※年齢は2024年4月11日(応募締切)時点。
■講評:市原 多朗 審査員長
本日は皆さん、本当にお疲れさまでした。お客様もそうですが、今日歌われた方々も、最近の厳しい夏の気候の中で準備するのは大変だったと思います。特に歌い手の皆さんは、しっかり休んでも翌朝のコンディションは起きてみないとわかりません。そんな状況の中で、今日の皆さんの立派な演奏には心から敬意を表します。ここにいる皆さん、そして客席にいる今日歌った方々に、どうか大きな拍手をお願いいたします。
私は50代頃から東京藝術大学で教え始めましたが、その頃から教授会などで「宝塚ベガ音楽コンクール」という名前をよく耳にしていました。宝塚という街はきれいだろうなと想像していましたが、今回、初めて審査員として訪れて、本当に品のある素晴らしい町だと感じました。そして、このような素晴らしいホールで、良い環境の中で皆さんが演奏されるのを、私はもう演奏しませんが、とても羨ましく聴かせていただきました。
1989年に第1回の宝塚ベガ音楽コンクールが開催されたそうです。その頃はまだ私はアメリカやヨーロッパで歌っていたため存じ上げなかったのですが、東京藝術大学の先生になってからはこのコンクールの名前をよく聞くようになりました。今回、審査員を務めさせていただくことを大変名誉に思っております。ありがとうございます。
また、かつてこのコンクールの審査員を務めた五十嵐喜芳先生というテノール歌手がいらっしゃいました。我々の青春時代には、「テノールといえば五十嵐喜芳」と言われるほど有名で、素晴らしい演奏をされていました。その五十嵐先生は2011年9月に83歳でお亡くなりになりましたが、16〜17年前のあるコンクールでご一緒した際、とても印象深い話を伺いました。
そのとき、五十嵐先生は、私たちが大変尊敬するティト・スキーパという有名なテノール歌手について話してくださいました。五十嵐先生が1958年頃にご夫婦で留学した際、スキーパ先生から指導を受ける機会があったそうです。そのとき、スキーパ先生が五十嵐先生に「我々オペラ歌手の仕事は何の職業に似ていると思う」と質問されたそうです。
皆さんはどう思われますか?
突然の質問ですみません。実は、その答えは「農業」だとおっしゃったそうです。スキーパ先生は、「オペラ歌手というのは、いきなり大きな声で歌えるわけでも、素晴らしいメロディーを描けるわけでもない。土壌に栄養を与え、空気を入れ、水をやり、種をまき、芽が出れば守って育てるようなものだ」とおっしゃいました。ハミングやヴォカリーズなどの基礎練習を重ね、少しずつ音楽的な表現を磨いていく。その積み重ねがあって初めて、歌が歌えるようになり、オペラ歌手として舞台に立てるようになるのです。
この話を、特に今日歌った皆さんにお裾分けしたいと思い、お伝えさせていただきました。歌は、一人で舞台に立つ華やかなものに見えますが、実は非常に地道な仕事です。今後も、若い歌い手たちを温かい目で見守っていただければと思います。本日は誠におめでとうございました。